2021年10月15日

日本の墓石の危機

日本にいったいどれ程のお墓が建っているのかは分かりません。しかし、令和3年1月1日時点で、全国の世帯数は5949万7356世帯と

なっています。ざっくり見て半数の世帯がお墓を持っているとすると、2974万8678世帯がお墓を持っていることになります。この数字は

何ら根拠はありませんが、また、2018年10月1日時点で、日本の居住世帯(住宅)は5361万6000戸、その内、持ち家数は、

3280万2000戸になり、おおよそ国内の持ち家世帯の90%がお墓を持っていることになります。かなりアバウトな根拠での計算ですが、

やはり、お墓は身近なものと思われます。

しかし、このお墓が今、大変危機的な状況にあることを御説明します。そして、正しいお墓の生産現場を少しでもご理解頂ければ幸いです。

 

世界の墓石工場となっている中国

中国の国土、大陸はほぼ石の上にあると言っても過言ではありません。都市があるほとんどの地質が、安定地塊と呼ばれているところです。

簡単に言えば、最も古く安定した強固な岩盤の上に人が生活し、そして、そこには沢山のお墓の原石となる石が埋まっているということです。

石材資源が豊富で、コンクリートで作るよりも石で作った方が安く建物や道路などを作れるということです。このため、古来から中国の石材加工の

技術は高く、今では世界中の花崗岩や大理石が中国に集まり、加工された製品(墓石、装飾品、壁や床材など)が、日本やヨーロッパ、アメリカ、

ロシアなどに輸出されています。

現在の中国経済の中でも最も早くから豊かになった業種として、この中国石材業界があります。輸出の中心地は福建省厦門市ですが、ここは

昔、イギリス領であり港が昔から栄えていた地域になります。厦門港から日本の主要な港には定期便が就航されていて、完璧なサプライチェーンが

確立されています。

墓石の場合、中国の工場に発注すると、早くて3週間、遅くても4週間で墓石が到着するというスピードも兼ね備えています。

膨大な中国経済発展に追いやられる中国墓石業界

中国経済の発展初期は、いわゆる「下請け型経済」でした。外国から注文を受け、それを生産して海外に輸出するというやり方です。

墓石などは正にそれに当てはまります。

しかし、ここ10年は中国国内の内需拡大による経済発展の方が目覚ましさを増していました。特にすごいのが不動産開発と道路や鉄道の

開発です。日本と違い地盤が安定していること、人手が豊富なこと、そして、地方政府の財源として、巨大な開発プロジェクトが各地で

進めらてきました。

これに邪魔になったのが中国墓石業界だったのではないかと考えます。

中国で産出される墓石用の原石は、大概が露天掘りによる採掘です。露天掘りというのは、地面から地下に向かって掘り進む工法です。

市街地では新たな露天掘りはできませんので、当然、郊外や人のいない場所で原石の採掘を行ってきました。しかし、ここ10年、

中国の丁場(原石を採掘する場所)が次々と閉山し、採掘の延長も認められない状況になっています。

理由は採掘が環境破壊にあたると聞いていますが、実際のところは、不動産開発の邪魔になるので、石の採掘をさせないということと思われます。

また、墓石加工の工場に対しては、工場の立地位置の制限をし指定地以外の工場を停止させたり、汚泥処理設備や換気設備の新たな導入を

義務化し、それができない場合はその工場を営業停止させることを地方政府が行っています。

中国墓石業界が中国経済に占める割合などは微々たるものです。高所から見れば無くなっても構わない業界なんだと察します。

中国経済への新たな危機

昨年くらいまでは上述した心配事だけでした。しかし、現在(2021年)では新たな心配事ができました。

不安定な中国社会への始まりではないかと感じています。

1、世界と中国との関係

現在中国はアメリカに次ぐ世界第2位のGDPを有する経済大国です。しかし、中国人は我々とは全く違う考え方をします。最たる自由主義と言え

ば聞こえはいいですが、簡単に言えば自分中心主義です。騙すより騙される方、盗られるより盗られる方が悪いと思う人たちです。これは

全ての人がその通りというわけではありませんが。契約書も意味がありません、口約束で十分です。博打が大好きでお金も大好きです。

そのために利用できることは何だって自分に都合の良いように使います。この様な本当にたくましい人たちです。

世界中の投資家はこんなことは初めから分かっていたのに、所得が上がり豊かになれば、中国もきっと真面になるだろうと、甘い自己暗示を

かけ続けて20年、やっぱりダメだったかと後悔をし始めました。

世界中から貿易ルールを守れと言われるようになりました。また、中国はその貿易ルールを逆手に取り、全力で儲けてきました。

中国人からすれば、ルールなどを持ち出す人たちはまるで子どもと話をするような感覚でしかないと思います。

鄭の良い植民地として中国から利益を貪ろうとしていた各国が逆に大切なものをむしり取られていることにやっと気づいたのです。

ただこれにアメリカは強く反発しています。「まあ、まあ、そこを何とか」という話し合いのラインはずっと昔でしたが。

2、中国不動産バブルの崩壊

恒大集団(中国第2位の不動産デベロッパー)のドル建債権の利払いが停止されました。おそらくグループの中心企業である恒大の不動産部門は

デフォルトします。しかし、恒大が倒産しても他のグループ会社には影響がないのが中国国内法です。ドル建債権を持っている人は大損をするで

しょうが、中国国内の債権者はある程度守られるでしょう。直接文句の言えない外国人などは、鼻から相手にされないでしょう。

ドル建て債券を発行している中国企業のほとんどは、恒大と同じだと思って覚悟しておいた方が良いでしょう。

ただ、この恒大集団の問題は、中国国内を不安定化させるのは確実です。また、中国と貿易をしている国々にも予想のできない問題を引き起こす

こととなるでしょう。

債権なんていう名前の紙切れにカネを出すなんて、騙される方が悪いんだよと思っているでしょう。

3、台湾有事

戦後中国は、内モンゴル、チベット、ウィグルなどに拡張しました。そして、漢民族への同化政策を進めています。また、今ではウィグルの

ジェノサイトが世界中から批判されています。同様に深刻な問題が台湾の問題です。早くて北京オリンピックの後に台湾への武力侵攻が

始まるととも言われています。台湾と台湾海峡は、日本の安全保障に係る重要事案ということは分かりますが、日本の墓石業界にとって

何より心配なのは、この台湾と中国厦門がすぐ目の前に位置するということです。地理上中国の台湾進攻の最前線が厦門になります。

台湾領の金門島は、厦門から観光船で15分くらいのところにあります。地図で見てもすぐ近くというのが分かります。

つまり、中国による台湾海峡の封鎖や、中国と台湾の有事となれば、墓石が日本に入ってこないことになります。この危機が

もうすぐ間地かに迫ってきているということです。

日本の墓石の90%以上は、この厦門港から出港しています。これが途絶えた時、代わる代替手段がありません。

日本では今の様なデザイン墓石を加工できる墓石店はまずありません。そして、原石もありません。一気に昭和初期頃の業界に逆戻りします。

あまりにも大きな問題で、どう解決すればいいのか、想像さえできません。

日本の墓石の危機

20年以上前、初めて中国アモイに行ったときは、古いヨーロッパのレンガ調の街並みがあり、信号機は1基しかなく、クラクションが

一日中鳴り響き、交通ルールなど無く、早い者勝ちで車が走っていました。また、墓石を加工する崇武へ行くのも2日がかりでした。

今では厦門空港にベンツで迎いに来てもらい、高速道路を使うと2時間で崇武に行ける様になりました。車も高層ビルも増え、物価も

日本より高くなり、アモイはビックリするほど近代的な都市に変わりました。

墓石に対する日本国内の考え方はここ10年位でかなり変わったように感じます。テレビで「もう墓石はいらない」「お寺は不要」

「死んだら骨は海にまいて」など、これまでのお墓文化に批判的な番組が繰り返し放映されました。

確かに業界としては反省をするべきことが多々あると思います。

しかし、自分ではどうも納得がいきません。今、夫婦別氏制をひどく声高に言っている勢力の放送をよく見かけます。これは日本の根底である

戸籍文化や家族文化を壊す主張です。お墓の不要から始まり、家族不要へと話がつながっています。これは計画された策略ではないかと感じます。

墓石の加工は、中国からベトナムやインドなど、他国で生産できないかと大手商社が代替産地を検討しています。弊社はその様な実力は無いので

その過程を見守ることしかできません。中国の石加工の根本技術は日本が教えたものではありません。今の崇武で加工をしている人は、

北京の紫禁城で石加工した人たちの末裔です。何百年もの歴史があるのです。簡単に真似できるものではありません。

やはり、中国のバブル崩壊によりこれまでの様な国土開発が崩壊し、古き良き石加工が復活してもらうことを期待します。

中国人は共産党政権を容認しています。それは、自分達の商売の邪魔さえしなければいいという考え方からきています。

弱肉強食の中において、自分は決して食われないという自信が中国人にはあります。下手なルールを作ってもルールを守る方が騙されます。

弊社も当初、バラ積船で原石や半製品を仕入れたことがあります。港でこれが出荷する石と言われて確認をしましたが、日本に到着して

確認すると全く違うものが入っていました。騙されました。2000万円。港で確認した石を船に積み込まれるところまで確認しなければ

ならなかったのです。そんなせいか今では、早くお金を払って下さいと中国側から言われています。

しかし、よくよく考えれば、これが商売の基本だということに気づきました。まったく高い勉強代でした。

こんな中国人ですが、どうしても嫌いになれません。

お墓を建てられるお客様にはこれまで述べたことは全く関係の無いことです。ですから、どんな方法を使ってでもこれまでの様にきちんと仕事を

しなければなりません。やはり、今後も中国取引先とよく相談をして来る難局を乗り切らねばなりません。

そして、お墓不要論には微力ながらそれは間違いという発信をしていこうと思います。

台湾問題についても正しい情報を仕入れ、お客様には墓石の流通を丁寧に説明し、安心して頂けるように努力して行きます。

自分でやれることは微々たることしかありませんが、日本のお墓文化を守る決意をしたいと思います。

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2003年厦門市